ほかの仏さまとはすぐ区別がつきます。右手をかざして、遙か遠くを望むそのユニークなお姿。よく見るとカラフルな服を身につけ、身分の高い人がつけそうな帽子をかぶっておられます。
この方は大権修理菩薩さま。正式には招宝七郎(じょうほうしちろう)大権修理菩薩というながいお名前で、もとは中国の神さまです。上海に近い阿育王山(あいくおうざん)という山に住み、命をかけて海を渡る人たちの、安全を守ると信じられてきました。(「修理」ではなく、「修利」と書かれることもあります)
とくに曹洞宗とは縁が深い方です。日本で曹洞宗をひらかれた道元禅師さまが、中国からお帰りのとき、ずっとその船にしたがい無事を見守られたと伝わっています。
それは鎌倉時代のこと。当時、船で海を渡って外国と日本を行き来することは命がけであったでしょう。命を失うことも、お伝えになるお釈迦さまのみ教えを失うことも、ありえることです。そうなっては元も子もありません。
ですが、道元禅師はぶじに日本の地にお帰りになりました。大権修理菩薩さまの、ご加護があってこそとお喜びになりました。
そのため、曹洞宗ではこの仏さまをたいせつにおまつりしています。曹洞宗で、この仏さまがいらっしゃらないお寺は、ないといっていいでしょう。ご本尊さまの右側、達摩さまと左右対称となるところにかならずいらっしゃいます。
東運寺でも、その定位置におられます。以前、ある仏師さんにもお褒め頂いた、きりりとした美しいお顔で、お寺の守り仏さまとしてどっしりとお座りになっています。