今年は辰年。龍は十二支で唯一、想像上の生きものです。
そのせいか、龍にはいくつも伝説がありますね。主に、天候や水に関する、大きな力を持っていると信じられているようです。

じつは、日本に曹洞宗をお伝えになった道元禅師も、龍の伝説を紹介されています。

海中に龍門という処あり。
諸の魚、波の処を過ぐれば必ず龍と成るなり。故に龍門というなり。
魚この処を渡れば必ず龍と成るなり。魚の鱗も改まらず、身も同じ身ながら、たちまちに龍と成るなり。

 
禅師のお言葉の聞き書きである、『正法眼蔵随聞記』に、このように書かれています。
海の中に「龍門」という門があって、そこを通った魚は、そのままの姿で龍となる(龍の力を得られる)という話しです。さとりを得ることの、例えとされています。

魚は、私たち、ふつうの人間の例えです。
龍は、さとりを得たもの。仏さまのことです。龍門は、道場に入ることを言っています。

「龍門」という縁を得て、私たちはふつうの人間の姿のままで、さとりを得ることができる、という話しです。さとりは、人間そのままの力で得られるものだ、ということを示唆しています。

 
それでも、「さとり」というと、私たちにはずいぶん遠い世界のように感じます。ですので、ここでは、「思いがけないことが起こってしまったときに、それを受け止められる力」と、言い換えようと思います。

思いがけないことが起こることは、その大小はあるにせよ、私たちすべてが経験します。そんなときに私たちは、それまで経験してきたことをもとに、受け止めて対応していきます。

つまり、その「受け止められる力」は、超能力ではありません。私たちふつうの人間が、毎日の中で培う力です。毎日の積み重ねの中からしか、生まれ出てこない力です。おなじ気持ちを持つ人たちと結び会うと、さらに強く深くなる力です。

 
ただ、その「思いがけないこと」が、今年元日のような大地震であったりすると、何もできず途方に暮れてしまうことでしょう。そのようなときの、どうしようもない辛さも、私たちは受け止めて乗りこえてきました。
その力も、超能力ではありません。私たちふつうの人間が、毎日の中で培う力です。毎日の積み重ねの中からしか、生まれ出てこない力です。おなじ気持ちを持つ人たちと結び会うと、さらに強く深くなる力です。

 
縁には、幸せをもたらすものもあれば、辛いこともあります。その縁が、みなさまにおかれましては、どうか「龍門」となって、ご自身の力に強さと深さが増すことになるように、心から念じております。