ぎゅっと緊張したお顔に兜をかぶり、幾重にも重ねられた衣と鎧をつけ、右足をかるく
前に出して立つ韋駄天さま。兵士のような格好ですが、合掌し、法棒(ほうぼう)と呼ばれる仏具をの手にはさむ仏さまなのです。

もとはインドの民族宗教である、ヒンドゥー教の神さまです。シヴァ神という最高の神の息子で、スカンダという名を持つ軍神でした。それが仏教に入ったのは、お寺の建物を守る守護神として、四天王のひとり増長天に従うようになったからとのこと。修行僧が悪魔に悩まされたなら、すばやく駆けつけて救ってくれると信じられてきました。

その活躍は、お釈迦さまのご遺骨が悪魔に盗まれたとき、自慢の駿足で奪い返した伝説にもっとも表れており、足の速い人を指す代名詞にまでなりました。
いまでは、お寺の台所や玄関の近くにおまつりされ、お守りくださる仏さまとして、お寺にはかかせません。
大本山永平寺や總持寺などでは、毎朝できあがった朝食を、まず最初に韋駄天さまにお供えしお拝をしてから、食堂や各部屋に配ります。毎日かかせない食事に、深くかかわる仏さまでもあります。

東運寺の韋駄天さまは、木像で高さはおよそ35センチ。庫裡の玄関を入って左手にいらっしゃいます。引き締まった、凛々しいお顔をされています。