新型コロナの影響で、今年の京都は、祇園祭りや大文字送り火も、縮小されたかたちでの開催となりました。感染の拡大が、まだまだ油断できない状況ですね。

心配な時間が、思わぬほど長くなっています。その不安からくるのか、当初より、差別の事件報道を耳にしてきました。たとえば、陽性患者が引っ越しを余儀なくされたり、開けているお店や医療従事者、県外ナンバーの車が嫌がらせを受ける、などのようなことです。
こういうニュースを見ると、ウイルスとともに、不安や差別も感染していくのだなと暗い気持ちにさせられます。病気にかかるだけでも辛いのに、差別にも苦しめられるとは、ほんとうに理不尽なことです。

 
今の時代にあって、私たちが不安をやわらげ、嫌な思いをする、もしくは嫌な思いをさせることなく過ごしていくには、どのような心の持ちようが良いのでしょうか。

とはいえ、不安は「わからないもの」に対する防衛本能だと言われます。その意味では、不安はあって当たりまえ。むしろ、なくてはならない感情ですね。
おそらく問われるのは、その不安をやわらげる、やり方なのだと思います。

 
たとえば、こんな考え方もあります。
私たちは「他人に迷惑をかけてはいけない」と思って行動します。人様に迷惑をかけないようにと、親から言われてきた方もたくさんおいででしょう。

ところが、じつはそれが難しいことも、よく実感されるのではないでしょうか。私たちは、迷惑をかけずに生きることはできないのです。

もちろん、だからといって、わざわざ迷惑をかける生き方を、勧めるわけではありません。
私がここで大切だな、と思うのは、迷惑をかけずに生きられないなら、お互いに、どこまでも謙虚に接する必要があるのだということです。それは、私たちの力には限界があると、静かに受け止める心持ちです。

 
私たちの力には限界があるとわかると、不安はやわらぎ、心は救われます。

なぜなら、できることを精いっぱいしよう、という覚悟が生まれるからです。

 
それでも不安をやわらげるには、時間はかかるかも知れません。特効薬のように、すぐに効くことはないでしょう。

しかし、必ず効きます。むしろ、ふだんからこういう気持ちを覚えておけば、ワクチンのように、私たちの心を守ってくれ、不安が少なくて済むことでしょう。そして、図らずも迷惑をかけてしまった他人に対しても、穏やかな気持ちで接することができるはずです。

今からでも、もちろん遅くありません。謙虚に力を合わせ、この危機を乗りこえていきましょう。みなさまがお暮らしになる毎日が、安寧であることを、心より願っています。

 

※ そのあたり、3月末に日本赤十字社が公開していた
「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!~負のスパイラルを断ち切るために~」
という文書が、たいへん参考になります。どうぞあわせご覧ください。