これは三人の仏さまを、それぞれ字に置きかえたものです。はじめてご覧になる方も多いのではないでしょうか。檀信徒の方がお作りになり、お納めくださったものです。
それぞれ、文字で表された仏さまが、仏像のように蓮の花をかたどった台(蓮華台)の上に乗っています。

 

まんなかがお釈迦さま。「バク」と発音します。迷いを断ちきり、安らぎを得る文字です。お釈迦さまの、おさとりを、そのまま文字にしたと言ってもいいでしょう。

お釈迦さまの左右には、脇仏のお二人がいらっしゃいます。

右は文殊菩薩さま。「マン」と発音します。文殊菩薩さまのように、智慧により、みずからを冷静に省みるはたらきを得る文字です。

左が普賢菩薩さま。「アン」と発音します。普賢菩薩さまのような慈悲が、かぎりなく行きわたるようすを表す文字です。

 

このような字を「梵字(ぼんじ)」といいます。昔のインドで経典に使われていた、サンスクリット語の文字です。奈良時代には日本にも伝わりました。時代をへて、梵字は単なる文字だけにはとどまらず、文字そのものが仏さまとして、たいせつにされていったようです。これは密教の特徴となっていきます。文字や、発する言葉そのものが、仏さまの象徴となるのです。

ご覧になっていかがでしょうか。見慣れない文字が、仏像とはまた違った不思議な印象を、もたらしてくれるものと思います。